FOR SURVIVORサバイバーインタビュー

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乳がんになって今だから思うこと[井浦玲子]

無題

井浦 玲子さん

①罹患した年齢
40歳  (38歳でしこりを自覚、乳腺専門医のいる病院で検査を受けるがグレーのまま半年ごとの検査を繰り返し、2年後病院を変えて40歳で乳がんの診断)

②職業
臨床検査技師

③手術の回数
1回 (同時再建希望だったが、病院の都合で叶わず。将来の再建も視野に入れて皮下乳腺全摘という選択)

④治療法
右乳房皮下乳腺全摘 + ホルモン療法(LH-RHアゴニスト製剤2年、抗エストロゲン薬5年)

⑤抗がん剤をしたか
無し (手術後の病理検査結果でがん細胞の顔つきが悪く(核グレード3)抗がん剤をすすめられたが、遺伝子検査オンコタイプDXを行い、結果がLOWであったため「抗がん剤を加えない」という選択)

⑥伝えたいメッセージ
乳がんの治療は自分で選択することがとても多いです。私の場合、手術は温存か全摘か、乳房再建をするか、抗がん剤をするか、妊孕性(にんようせい)の温存をどうするか、そして今はホルモン療法5年を迎え10年まで延長するか決めなければなりません。治療の選択は「そのひと自身の生き方」。短い時間で決めなければいけないこともありますが、それでもしっかり自分で考えて自分で選択することで、前向きに治療を受けることができます。

⑦プロフィール
横浜市立みなと赤十字病院乳がん患者会ひまわりの会代表
BEC(CNJ認定乳がん体験者コーディネーター)、臨床検査技師、介護福祉士、認定エステティシャン、AEAJ認定アロマセラピーインストラクター
正式に「乳がん」と診断された日、ちょうど開催されていた乳がん患者会に足を運びました。そこには笑顔がキラキラした乳がん経験者が何人もいらっしゃいました。たった1回の参加でしたが、この時の経験者の姿は、その後治療を行っていく上で私の大きな心の支えとなりました。そして私も誰かの支えになりたいと思い、BEC認定後に乳がん患者会を始めました。今年で3年目。仕事をしながら、有休を取得して月に1回のみの開催ですが、3年で延べ300名の参加者となりました。今後も細く長く続けていくことが目標です。


乳がんになって今だから思うこと

いつかママになる夢

将来の進路を決める時、保育士への道も考えたほど子供が好きで、きっといつか私もママになるのだろうなと漠然と思っていました。

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結婚したのは24歳。仕事も遊びも勉強も楽しくて、「今は子供はいらない。妊娠出産はそのうちに。40代で産んでいる人もいるしね。」と気楽に過ごしていました。そんな中、29歳で胃がんの母を看取り、33歳で肺疾患の父を看取り、36歳で夫の転職を機に別居、38歳で離婚。すでに実家も無く、戸籍は私ひとり。それでも「私ガンバル!」と思っていた矢先、胸にゴリッとしたしこりを発見。「まさか・・・」とは思っていたけれど、なかなか診断がつかず病院を変えて40歳でやっと乳がんの診断がつきました。しこりを発見してから2年後、東日本大震災があった2011年3月に手術。しかし、がんのあるところを切除しまえばそれで終わり、ではありませんでした。

乳がんの治療は5~10年と続くことがある。
乳がんの治療によっては妊娠・出産ができなくなることがある。
(年齢によっては閉経のリスクがある)

乳がんだから胸を切除するのは仕方がないと思っていました。胸を失うことは女性としてとても辛いことだけれど、今は乳房再建で形を取り戻すことができます。でもそれだけではなく、「乳がんの治療によって妊娠・出産も諦めなくてはいけないかもしれない」という現実を目の当たりにした時、それは乳がんと診断された時以上にとてもショックでした。

胸も失って「いつかママになる夢」も諦めなければいけない・・・

そんな絶望感の中、ふとテレビで「がん患者さんの卵子凍結」のニュースが流れました。がんの薬物治療前に卵子を採取凍結保存しておき将来の妊娠の可能性を残す生殖医療。早速主治医に「いつかママになる夢を諦めたくない」と伝え、薬物治療開始まで少し時間をもらい卵子を採取凍結保存。たとえ1パーセントでも夢を諦めずに治療ができることは大きな心の支えとなりました。

当時たまたま見たテレビで情報を得ることができ妊孕性(にんようせい)温存をしましたが、今はがんと診断された時に、病院側から情報提供されるようになってきました。また、乳がんの仲間で乳がんの治療後妊娠出産をされているかたも何人かいらっしゃいます。

年齢とともに卵子は老化します。女性が自然に妊娠する可能性は30歳を超えると少しずつ低下して、35歳くらいから急激に低下します。45歳を過ぎると体外受精や顕微授精を行っても妊娠することはとても難しくなります。私はこういった知識を得る機会があまりないまま、向き合うことをしないまま年を重ねてしまったことをとても残念に思っています。

今、人生設計の中に妊娠出産を思い描いている人は「いつかそのうちに」ではなく、今からいつでも産める身体づくりをぜひ実践してください。

私が夢見た「いつかママになる日」、皆さんにはぜひ叶えて欲しいです。

リンク参照元:一般社団法人日本生殖医学会

 

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