FOR SURVIVORサバイバーインタビュー

ハート

正式なセカンドオピニオンではないけれど

胸にしこりを発見して以来、診断前、診断後、その後経過を見るため色々な検査をしてきました。検査を受けるとその結果が出るまでの間、必ず身の置き所のない不安が襲ってきます。インターネットで検索するとたくさんの情報が溢れていて、どうしてもインパクトのある情報が目に飛び込んできてしまいます。

img_03

正しい情報はどれなのか?私はどうなってしまうのか?考えるたびにいつも心は波立ち右往左往していました。なかなか現実に向き合えない自分がいました。そんな時、メールで相談にのってくださるT先生を見つけたのです。早速メールをすると、

「結果を待つ時間は辛いですね。でも、泣いて過ごしても、笑って過ごしても同じ時間。泣いていたらもったいない。好きなことをして笑って過ごそう!いつも応援しています。」

そんなお返事が届きました。お会いしたこともない先生からこんなに優しい言葉をかけていただけるなんて!とても感激しました。そうだ、泣いても笑っても結果は変わらない。私らしくどっしり構えていよう。そんな風に思えるようになりました。

乳がんの手術前、「術後補助療法はホルモン療法を行うかどうか」との説明を聞き、抗がん剤のことは全く考えていませんでした。ところが、病理の結果が出て状況は一変しました。「浸潤癌、核グレード3、細胞の顔つきが悪いタイプ、増殖スピードが速いので抗がん剤治療を行った方がいい。40歳で抗がん剤治療をしたら閉経するリスクは高い。妊娠出産は諦めないといけない。」思ってもいなかった結果に私はかなり狼狽えました。

必死で「抗がん剤」について調べ、必死で「抗がん剤をしなかった人はいないか」探しました。メール相談のT先生も、乳がん掲示板の経験者も皆揃って「核グレード3に抗がん剤は必要」と言います。医療者の勉強会でも「核グレード3は抗がん剤が必要だと思う先生95%以上」との話がありました。そんな中、別のメール相談のN先生を見つけ、気持ちを伝えました。すると、

「一度相談にいらっしゃいませんか」そう言ってくれたのです。

対応してくださったのはN先生ではなく、薬の専門家である薬剤師さん。ホルモン療法や抗がん剤がどのように効くのか、どんな副作用があるのか、私のタイプの再発率(アジュバントオンライン)などについて改めて説明してくださった後に、「自費で高額(45万円)だけれど「オンコタイプDX」という遺伝子検査をやってみては?」と提案をしてくれました。これは乳がんが再発する可能性と術後補助療法の治療効果を予測する遺伝子検査で、もし結果で「低リスク」と分類されたら抗がん剤なしでホルモン療法のみでの治療もあるというのです。

image

早速主治医に「オンコタイプDX」をお願いしたいと伝え、結果が出るまでの1か月間は抗がん剤をすることを想定して、仕事の調整&応援依頼、ウィッグの試着、メイク方法の勉強(眉毛の書き方練習)などできる限りの準備をしました。

1か月後、結果はなんと「低リスク」の判定。主治医と1時間近く話し合い、私は「抗がん剤をしない」という選択をしました。でも、主治医が最善と思う治療を選ばず、もし万が一再発した場合、もう面倒は見ないと突き放されたりしないかとても心配になりました。そんな私に「私は井浦さんの主治医ですから、どんなことが起きても最期まで診ます。」そう言ってくれました。安堵と同時に涙がぽろぽろこぼれました。

私の命はひとつしかありません。その命は永遠に続くわけではありません。
だから後悔したくない。

私が利用したメール相談や、薬剤師さんの相談は正式なセカンドオピニオンではありませんでしたが、主治医以外の専門家の意見を聞き、アドバイスをいただくことで、自分の中で何が大切かを考え、納得して選択することができました。

この選択は私の生き方そのものです。

また、薬剤師さんからはもうひとつアドバイスをいただきました。「今つきあっている彼は子供が大好き。胸も無くなって、子供も産めなくなってしまったら、私は彼の未来を台無しにしてしまう。彼のいない人生も考えなくてはいけないと思っている。」と涙ぐむ私に、「ここからは薬剤師としてではなく、ひとりの男として伝えますね。大丈夫、別れるなんて、全くそのことは考えなくていいですよ。今は何も心配しなくていいです。」そう言って励ましてくれました。

子供好きの彼は、今も隣で笑っていてくれます。

 

>>乳がんになって今だから思うこと[井浦玲子]

>>乳がんになって今だから思うこと②[井浦玲子]  

 

Copyright2016 © NPO法人C-ribbons(シーリボンズ) All rights reserved.